騰将軍から学ぶ、大局観

営業テクニック

もはや全ては救えぬ

この短いセリフを僕は日々の生活の中で、また雇われ人でやっている営業職の中で大事にしている。今回はそれを共有したい。

出典

先ほどのセリフは『キングダム』(原泰久先生)28巻 第298話「窮地の大抜擢」からの引用だ。合従軍に詰め寄られた秦は、各所で各国軍と戦闘している。そのうち楚軍と相対している将軍・騰(とう)は、敵将・禍燐(かりん)の巧みな戦術により完全包囲されてしまった場面から始まる。

秦軍は先鋒として2つの隊を前線に押し出しており、この楚軍の包囲網に完全に取り残されている状況に陥る。容赦無く楚軍の突撃が始まる。一刻の猶予もない状況の中、将軍・騰は眉間にしわを寄せて目を閉じ、一瞬思考する。楚軍が迫り来る中、騰は目を見開き、側近の将校に陣形を指示する。

騰は敵の斜めの攻撃に向かって布陣を作った

隆国(武将)を中央軍として両翼を置き

本陣をつり鐘状に囲い 中に予備隊を隠した

すでに包囲されつつある戦況の中

各方位に意識が配られた堅い守備の陣形である

しかしこの軍配備には一つだけ大きく欠落するものがあった

「その陣形では先鋒2隊の救出ができません!」と将校は反対する。騰は言う。

援軍は送らぬ

この劣勢配置の中

もはや全ては救えぬ

今は二軍を見殺しにしてでも本陣の崩壊を防ぐ刻(とき)だ

結果、取り残された2隊は包囲攻撃を受け壊滅してしまうが、この判断によりこの戦において最重要である本陣を守り抜くことができ、敗北を免れたのだった。

損切りという概念

投資の世界に損切りという概念がある。株価が下落した時に、さらなる損失を防ぐために、現状で損が出ている部分は諦め、一部の資金を回収するという考え方だ。

今回の騰将軍の判断もこれに似ている。2つの軍を救おうとしたら、さらなる損失が出てしまうし、本陣が崩壊し、この戦に破れてしまう。この戦場の敗北は他の戦場にも波及し、秦国全体の戦況に影響を与えてしまうだろう。それらを一瞬で考え、秦国全体の損益を考えた末に決断したのだと考察できる。

私情を挟まない

敵軍の中に取り残された先鋒隊の隊長(録鳴未:ろくおみ)と干央(かんおう)は長年一緒に戦ってきた仲間であり、騰軍において重要な存在だ。そんな二人を失うことと、秦国全体の戦況、ひいては秦国の滅亡を天秤にかけて、騰は決断をした。本陣の堅守が最優先だと。もし騰が私情にとらわれてしまう将だったら、二人を救うことを優先したかもしれない。

この場面は戦争だから、合理的な判断が優先されるが、私情を抜きに考えるというのは難しいことだ。僕らの実生活でも、程度は違えど似たことはよく起きる。そんな時は思い出して欲しい。

全ては救えぬと。

営業活動において

僕は営業マンだから、選択を迫られる場面が多々ある。

  • 顧客との関係性
  • 利益率
  • 工場の稼働率
  • 在庫リスク
  • 難易度
  • 自社のキャパシティ
  • 将来性

これら全てが満たされる案件というのは、ほとんどない。どこかが欠落していたり、ほとんどダメだが1点のみ突出していたりする。それらを総合的に考える。自社のためになるのか、自社に負担が大きくないか、長い目で見てどうなのか…それらを商談の中の一瞬で判断しなくてはならない場面もある。普通なら、そういう重要な決定は「一度、社に持ち帰ります」が鉄板で安全牌だ。

だが僕が顧客と接していて感じるのは、その場である程度の判断ができる営業マンを顧客は求めているのではないだろうか。「それはできそうです。一応、上長の決裁をとります」とか「それは厳しいと思います」と、ある程度の即答ができると顧客の信頼は高まる。もちろん、この決断の精度が高いことが絶対条件だ。後になって「やっぱダメでした」とか「やっぱOKでした」とかではかっこ悪いし、若干だが顧客の信頼は揺らぐ。

大局観のトレーニング

できない約束はもちろんダメだが、会社全体の視点に立ち、判断することは大局観を養うトレーニングになる。毎回、持ち帰り上司の判断を仰ぎますでは顧客の信頼は得にくいし、このトレーニングを続けることで、経営側の考え方ができるようになる。

このトレーニングをしながら、上長に相談し「私はこう考えるのですが…どうでしょうか」と答え合わせをする。もちろん自分の判断が甘く、修正されることもある。だがそれは重要な学びとなる。その姿勢は上長にとっても頼もしいのではないだろうか。

※ちなみに取り残されていた2隊の録鳴未と干央はボロボロになってたけど生還した。騰は二人の実力ならば生還すると信じていたとも考えられる。

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