2021年3月。
新型コロナウイルスとの戦いも1年以上が過ぎた。
ダイヤモンドプリンセス号の横浜への寄港が2020年2月。
あの頃は、まだ市中感染もほぼなく、中国は大変だなぁと対岸の火事であったが、今はそうも言っていられない。
思えば昨年の今頃は、まだ楽観視している人も多くいた。
最初の緊急事態宣言が出ても、「夏には落ち着く」というノンキな人も多かった。
したがって、ライフスタイル・働き方を、大きく変えなくても済む、どうせまた元に戻るとタカをくくっていた人も多かった。
残念ながら、どうやら元にはもどらないようである。
そのようにして、コロナ禍を通して不可逆の変化をした事象のひとつとして、本記事では「ゆるふわ営業マンの終焉」について記録を残しておこうと思う。
ゆるふわ営業マンのメカニズム
残念ながら僕が提唱してきたゆるふわサボリーマン営業職(化学メーカー)はもうできなさそうだ。
なぜ化学メーカー営業マンがゆるふわだったのかというと、まずは
毎月・勝手に・売れる
という特性があるからであった。
まずこの部分に関してはコロナ禍によるダメージは少なかった。
化学メーカーは、多くの産業に材料供給しているので、収益源が分散されていたのが良かった。
イベント関連や建築関連がダメでも、医療向けや電材系が好調でカバーできた。
そして「毎月・勝手に・売れる」という前提があった上で、「面談」を重視する化学業界の慣習があった。
定期的に客先に訪問して、茶飲み話をする。
そのなかで「そういえば…」からヒントをもらったり、密談をしたりして仕事をもらってきた過去があった。
だから、化学メーカーの営業マンはアポイントをとって、お客様と面談をすることがジャスティスであった。
「オフィスにいるよりも客先へ行け」
という昭和で体育会な価値観が生き残っていた。
「面談」するためには当然ながら「移動」が必須である。
この「移動」は時間を使う。
自動車、新幹線を用いた遠方となれば、半日から1日は使う。
だから直行や直帰が珍しくなかった。
そこを悪用し「面談」のための「移動」という名目で時間を掠め取る。
エア・アポイントメントを作って行ったことにする。
こうして本来ならば会社に買い取られているはずの拘束時間を、自分の時間にする。
その確保した時間で副業なり勉強なりをして、雇われ人卒業へ向けて積み上げていく。
これが聖帝サウザー師匠も提唱する、ゆるふわサボリーマンメソッドであった。
ここでのポイントが、最初にお話しした「毎月・勝手に・売れる」という特性である。
サボった分だけ売り上げが上がらなかったら、普通に怒られてしまう。それでは意味がない。
サボっているけれども数字はちゃんと達成できている、というのが大事なのだ。
この特性に立脚していたのが化学メーカー営業マンでエクストリームサボリーマンをやることだったのだが、2020年からはコロナ対策のためお客様側からも面談NGとなってしまった。
不可逆となったWeb面談
2020年3月ごろから「訪問や面談は控えてください」というお客様や取引先が増えた。
当たり前の対応である。
特に、大手企業は対応が早かった。
そんな感じだから、化学メーカー営業マンはやることがなくなってしまった。
とはいえーー
そもそもやること自体が少なかったのだが。
やることが少ないので「とりあえず外出」して、仕事してる風を装っていた。これは暗黙の了解であった。
しかし面談NGとなると、外出する理由がない。むしろ外出してはいけない。
そのため営業マンたちは1日中ヒマしていた。
僕はコッソリ執筆活動をしていた。これはこれでよかった。
しかしそんな生活が3ヶ月、半年と続いてくるとさすがにお客様からも問い合わせや面談希望の打診が増えてきた。
夏頃にはなんだかんだ、たまに訪問して面談とかしていた。
ところがまた一気に感染者数が増えて、また訪問NGになった。
しかし打ち合わせなくてはならない事柄は毎日、湧いてきてしまうようになった。
お客様たちがテレワークでもプロジェクトを進められるようになってしまったからだ。
そこでさすがに電話やメールだけでは限界が見えてきて、お客様たちの方から、
「Webミーティングしませんか?」
とのお声が多数かかるようになってきた。
Webミーティングの天下分け目
これは僕の体感だが、Webミーティングが浸透するかどうかの分かれ目は、2020年の秋だったと思う。
この頃までにコロナが沈静化していたら、きっと以前のままのスタイルが続いたはずだ。
つまり訪問して・面談するという旧来からの営業スタイル。
しかしそれが難しくなってしまったので、皆、致し方なくWebミーティングに取り組んだ。
すると、これがなかなかメリットが大きいことが判明したのだ。
- 移動のコストがない
- 予定調整しやすい
- エライ人や他拠点の人もリモートで参加できる
- 感染リスクがない
等だ。
このオイシさを、多くのお客様が社内外で体験してしまった。
年配のお客様ですら、体験してしまった。
「あっコレ、便利やん」
と、気付いてしまったのだ。
設定も簡単だ。
だからもし仮に、コロナがこれから一気に収束したとしても完全に元には戻らないだろう。
「別に訪問してもらわなくても、Webミーティングで十分ですよ」
と言われるようになってしまったのだ。
長くなったが、このWebミーティングのお客様への浸透が、ゆるふわ営業マンの「面談のための移動時間」を無くしてしまった。
もうここまで普及してしまったら、完全に以前のように戻すことは不可能であろう。
ひとときの凪
いま、僕の勤務先のオッチャン達は毎日毎日、ヒマしている。
この一年、深刻なレベルでヒマしている。
しかし会社は業績が良い。
そのため、オッチャン達は完全に油断している。
楽観視している。
しかしこれは危ない。
実は上層部はすでに効率化の準備を進めている。
僕のような若手に仕事を集めて効率化させる。
オッチャン達から仕事を取り上げる。
顧客担当を若手へ引き継ぎさせる。
そして担当を無くした後は追い出し部屋に押し込めて、役職を剥がして給料激減させていく。
いかに合法的に自主退職させるか?を考えているようだ。
今の時期のこのヒマさは、静けさは、ただの凪。
人員整理の嵐はすぐそこまで迫っている。
雇われ人の賞味期限
2019年までは並の営業マンのオッチャンでも「いざ鎌倉」要員として囲われていた。
しかしWeb面談の浸透でアタマ数は不要となった。
Web面談により物理的な移動時間が激減したことにより、1人の担当者が対応できる顧客数が増えた。
体感だが、移動時間が無くなるとすれば、1.5〜2倍の数を担当できるようになる。
そのため人員整理は待ったなしであろう。
まずは50歳以上のオッチャン達がやられていくわけだが、これは決して他人事ではない。
あと20年経てば僕がその立場になるからだ。
やはりーー
雇われ人にも実質的な賞味期限がある。
勉強しなくなったり、変化への対応をサボった人は生き残れなくなっていく。
雇われ人も求められるレベルが上がってしまった。
かつてPCの導入で淘汰された層が居たように、Web面談時代に成果が挙げられる営業マンしか、最前線には配置されなくなっていくだろう。
聖帝サウザー師匠がツイートしていた
「年老いた犬に新しく芸を仕込むことはできない」
というフレーズ。
これは残酷だけど真実だ。
いまだに弊社オッチャン達はエクセル検索機能が使えず、五十音順に並べ替えて辞書のように探す。
Web会議のセッティングも覚えられず僕に「やっといて」とか言ってくる(覚える気がない)。
お前ら、自分で自分の首を締めてるのをわかっているか?
「膿を出す係」
ではこれから求められていく雇われ人の姿はどんなものなのか。
幹部の話を統合していくと
「長年の膿を出す」作業が今最も求められていると感じる。
僕は幹部からコッソリ言われている。
「今いる管理職は、もう変えられん。だから今から、準備してくれ」と。
その準備とは「会社全体の最適化」である。
これまで、旧来のやり方が非効率・無駄・非合理的だと、幹部は実はわかっていた。
しかしそれに反対する、旧来のやり方が大好きな「ラクしたいオジサン(無能な兵隊)」がたくさん居て、抵抗勢力として大派閥だった。
そのため幹部としても彼らを無視できなかったようだ。
なぜなら日々のオペレーションを回すのは彼ら兵隊であり、兵隊には気分良くブルシットジョブを遂行してほしいからだ。
彼らは感情の動物(猿)だから、その「お気持ち」に配慮が必要だった。
しかしこのコロナ禍で、その無能な兵隊達のアタマ数が要らなくなった。
ここが重要である。
経営側は兵隊達の「お気持ち」に配慮せず一気に効率化を進める土壌が整ったのだ。
「効率化します。文句があるなら、辞めれば?」
とアタマ数揃えの無能猿兵隊達に堂々と言える環境が整ってしまったのだ。
これは怖いことだが、もう戻れない。
ここからは一気であろう。
評価の観点
「もう変えられん」といわれた人々は今はノンキだが、閑職飛ばしの準備は水面下で着々と進んでいる。
合法的に自主的に辞めさせる方法は確実にある。
そこで
「こんな待遇なら、私もう辞めますわ」
と言えるか、言えないか。
そこが最大のポイントになる。
そもそもそういう閑職ルートへ行かされない立ち回りが必要になるが、50代の今までノンキに仕事ゴッコしてた人はもう間に合わない。
その人間が「ヤる奴」かどうかは、長い期間でジャッジされている。
- 問題を根治させようとするか?
- 全体最適を考えているか?
- 周りの人間とうまくやっていく情緒面での成熟があるか?
この辺を数年にわたって、吟味されている。
一度や二度では判断できないが、何回もこのチェックを受けていると、さすがに傾向が見えてくる。
- 我田引水ヤロォ
- その場しのぎしか考えず大局感がない
- 人間関係構築が下手で禍根を残す
- 部下を育てる器がない
などである。
そんなことを僕は幹部からコッソリ聞いた。
聞いたからには、その期待に少しは応えねばなるまいと最近思ってきた。
別に
「幹部から期待されてる俺SUGEEE!」
なんて思ってない。
こんなくだらない、自分のためじゃない社内の改革なんて、なんで僕がやらなきゃいけないんだよ…とすら思っている。
いずれキャッシュフロー確保したら辞めるつもりでいるのにさ。
そんな僕の腹の中も知らないで、次世代を託してくるんじゃねぇよ…と思う。
それでも今はこの船に乗って貯金していくしかない。
天動説はいずれ死ぬ
僕は「バカの下で働きたくない」と思って独立の道を探し始めた。
当時の上司が嫌で嫌で仕方なかった。
2016年のことだ。
それから5年が経った。
気が付けば僕が嫌いな「バカ」は周りから減っていた。
この5年の間に、
- 持病が悪化して辞めた人
- 持病により営業から外された人
- 営業センスなしで閑職に回された人
- 部下育成能力なしとして部下を剥がされる人(僕が嫌いだった人)
などなどいた。
もちろん定年退職もいた。
当たり前だが、皆、一様に歳を取る。
気がつけば僕が大嫌いだった「バカ」はだんだんいなくなってきた。
そういうところを見てもわかるのだ。意外と幹部はバカじゃなく、見ているのだと。
使えないやつ、害悪なやつは表舞台から排除されていく。
天動説は、地動説が強く支持されたから消えたのではない。
天動説派の人が皆老いて死んだから、地動説が認められたのだ。
この5年で、僕の身の回りでは2:6:2の法則でいうところの下位2が排除された。
そしてこれからは中間の6のうちの下位2がターゲットになってくる。
そして減らした枠に新人を送り込んで組織を若返らせる。
2:6:2は必ず生まれるというが、老人の2と若手の2では、耐用年数の面で若手が有利ということである。
自刃する準備
雇用側の戦略はこんな感じと分析する。
①遊ばせつつじっくり歳を取らせ市場価値を失わせる。
②イノセント勤め人に洗脳する。
③住宅ローンと子どもで詰んだら完了。
こうして詰んだ雇われ人には呵責なき攻勢をかけることが可能になる。
転勤・異動・減俸、なんでもござれだ。
だからこそ詰まないための組み立てが要る。
交渉力をつけないと、言いなりになるしかなくなる。
ここまでエラソーに語ってきた僕も、いつかは老害になっていく。
「あ〜…僕もう組織の役に立てそうにないです!スイマセン引退します!」
と潔く引退したい。自刃したい。
その時に困らないために、住宅・車ローンは組まずに、資産形成をしてキャッシュフローを構築しておく。
組織人として自刃する用意する。
しがみつくのは自分もミジメだから。
コメント