ちいかわを読んで感じたこと
フランケン先生が「ちいかわは労働者のメタファーだから」とツイートしてから、もうちいかわはそういう漫画なんだと認識してしまった。
ちいかわをサラリーマンに置き換えてコラージュしてる作品群を見て思うのだが、
元々ちいかわは「サラリーマンの生態をかわいいキャラクターで可視化した時に生じるグロテスクさ」がテーマだと思ってるので、無粋な感じがする。
「逃げ恥」をアンガー田中とハリセン春菜でリメイクするのと同種の。
— フランケン (@BlackSheep8270) May 29, 2023
ちいかわをサラリーマンに置き換えてコラージュしてる作品群を見て思うのだが、
元々ちいかわは「サラリーマンの生態をかわいいキャラクターで可視化した時に生じるグロテスクさ」がテーマだと思ってるので、無粋な感じがする。
「逃げ恥」をアンガー田中とハリセン春菜でリメイクするのと同種の。
今日はそんなちいかわについて私見を述べておこうと思う。
ワールド全体について
まずあのちいかわワールド全体に漂う謎の雰囲気を言語化していきたい。
ちいかわワールドにはちいかわ達の他にも危険な生物(巨大鳥、キメラ、ギチギチ、魔女等)が居て、ちいかわ達を捕食せんと狙っている。
これらの危険は、病気や事故といった「死」のメタファーであると思う。
この「死」になんとか抗いながら、ちいかわ達は今日も生き延びていくのである。
そして他にも友好的な勢力(鎧さん、オデ等)もいる。
特に鎧さんは管理者的な立場であるので、現実世界における政府や企業のメタファーではないかと思う。
食べ物は、そこらへんに実っている木の実や川にある謎の食べ物など野生のものがある他、湧きどころという炊飯器(米)や出汁サーバー、巨大プリンなどがある。またお金を出して買うであろうインスタントラーメン(チャルメラ)やうどんなどもある。
また、お金を払って食事をするラーメン屋やレストランも存在している。
ちいかわ達の棲家についても、謎の分譲戸建っぽいところ(ちいかわ)や、洞窟(ハチワレ)などがある。
この世界に住むちいかわ達は、鎧さんが仕切っているギルドのようなところで労働の案件を請けて、仕事(採集、討伐など)をして、その報酬を鎧さんにもらっている。
古本屋を開いてお金を稼ぐ者もいる。
ただ、なかなかそれだけでは生活はできないようで、バイトと掛け持ち、といった感じの描写もある。
このように、食べて、働いて、寝て…という、まさに人間と同じような日常を送っているちいかわ達。
この類似性が、私たち大人を惹きつけるのであろう。
特に「労働」や「資格試験」などはこれまでの似たような漫画では扱われることはなかった。そういうところがちいかわの持つ不思議な魅力なのであろう。
主要3キャラについて
これまたフランケン先生の考察によると、スタンダードな能力を持つハチワレにチューニングを合わせているから、ハチワレやそれに近い層の発言が日本語になるのだという。
ちいかわ
ちいかわは知能や能力で劣る「残念系」であり、「フ!」とか「わぁッ!」というセリフは、チューニングが合っていないから聞こえないのであると。日本語にならないのであると。
ちいかわは、草むしり検定5級に不合格だった。
ちいかわが5級を受けると知ってから、後から勉強開始したハチワレは見事に5級に合格した。
しかも作中ではちいかわは結構マジメに勉強しているシーンが多く描かれている。
しかし試験に不合格だったところを見ると、ちいかわはハチワレよりもIQが劣るということになる。
またちいかわは運動神経や戦闘力もハチワレに劣る描写が多く、やはり高スペックであるとは言えない。
ただ、性根は優しい性格をしていて、友達想いだったりするから人望がある。
後述する、ウサギや栗まんじゅう先輩を惹きつける魅力があると言える。
ただ残念ながら、実力という面では偏差値でいうなら45くらい、平均よりもちょっと下、というイメージになる。
私の見るところ世の中の多数を占める人はちいかわクラスである。
ちいかわの住処は懸賞で当てた住居である。
懸賞という形態をとっているが、私が思うにこれは「寮」「社宅」のメタファーと思う。つまり懸賞とは就職活動であり、その懸賞にうまいこと当たったちいかわは、良い住居に住めているのである。
ハチワレ
ハチワレは、偏差値でいうと55〜60の、やや優秀な層であろう。
知力、戦闘力ともに悪くはないが、まだ修行が要るレベル。
しかしIQや体力も悪くはないので、偏差値65くらいまではいける才能を持つ。
住処が洞窟なのは、出自が低いことを示すメタファーであろう。
あとは性格も向こう見ずなところがある。
良く言えば大胆、勇敢、行動力がある。
悪く言えば無謀、無鉄砲、詰めが甘い。
直近の南国編においても、後述するラッコ師匠が警戒を怠らないのに対して、ハチワレは疑いなく取り込まれてしまっているので、やはりここは経験による学習が必要な部分と思う。
ウサギ
ウサギは一見すると意味不明な行動や言動が多く大丈夫かコイツとも思うのであるが、随所でそのスペックの高さを披露する。
草むしり検定3級に合格していたり、爆発する特殊な武器を持っていたりする。
また作中ではちいかわハチワレのように地道に草むしりをする描写はほぼない。
しかし3級を持っていることから推測すると、かつてウサギも草むしりをしていて3級までたどり着くも、その効率の悪さに気づき、辞めた、というのが私の考察だ。
このウサギが持っている「3級」というところがポイントだと思う。
まず、ちいかわハチワレが最初に挑んだということで5級が最も低い級であることがわかる。
そしてウサギが持つのは3級。
ということはその上、2級や1級もあるはずだ。
しかしウサギはこれを取らずして、草むしりから離れている。
そしてウサギは労働で収入を得るというよりも、食糧の湧きどころをよく見つけている描写がある。
これは自営業のメタファーではないかと思う。
鎧さんが管轄する「労働」でちいかわハチワレは草むしりや討伐をして、報酬を得ている。
それを使って、食糧を買ったり、外食したり、本を買ったりしている。
これに対してウサギは、鎧さんの労働を経由せずに湧きどころから食糧を得ている。
つまりちいかわハチワレがサラリーマン的に生活しているのに対して、ウサギは自力で食糧を探すスタイルをしているのだ。
この「湧きどころ」はビジネスや景気のメタファーであろう。
いわゆる「フリーランチ」だが、どこに湧くかはわからない。これを見つけ出して食す、そしてそこが枯れたらまた違う湧きどころを探索するというのはまさに、自営業のスタイルだろう。
自営業も、時流に乗った商売や、効率が良い市場があって、そこを狙っていくのが基本になる。
ウサギは、日本語として聞き取れない発言や、常軌を逸した振る舞いをしているように描写されるが、これはフランケン先生のいうところの「ハチワレにチューニングが合わせてあるから」であり、するとウサギというのは上の階層の住人であるということになる。
確かに、一般のサラリーマンからすると富裕層の言動や行動は理解できないことがある。
そういうメタファーなのだと思う。
後編へ続く
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