牛丼定期券に思うこと

日記

吉野家で定期的に行われている「定期券」キャンペーン。これについて思うことを書く。結論としては、影を縫われた状態になり、それに対するリターンは怪しいのではないか、ということだ。

牛丼定期券 概要

販売価格は300円。これを提示すると吉野家での会計から80円が引かれる。またはなまるうどんともコラボしており天ぷらが100円引きになるという定期券だ。今回、2019年4月の場合、4/1~5/6が有効期限で、何回も使える。

1回あたり80円なので、元を取るには4回使うとトントン、そこから先は80円ずつ得をしていく。例えば10回行ったら80円×10回で800円分、定期券代300円を引くと500円得をしたことになるのだ。

吉野家の狙いは?

この定期券は数年前からキャンペーンが行われるようになり、僕は毎回買ってた記憶がある。僕は牛丼チェーンで、牛丼の味付けは吉野家が一番好きだから、なんだかんだ行くのでお得だと思って買ってきたのだ。しかしその中で、吉野家はこんなキャンペーンをやっていて、大丈夫なのだろうか?と気にし始めた。だが色々と勉強していく中で、吉野家が定期的にこのキャンペーンを行う理由が、その効果がわかってきた。いわば狙いである。

プリペイドが最高

商売においては代金の回収が重要だ。クレジットカードや手形など、入金までに時間がかかるものは尚更だ。吉野家は基本的に現金決済だから、この入金サイトが長いという問題は少ないだろうが、現金決済以上に最強なシステムがある。それが前払い(プリペイド)だ。

ガソリンなどでプリペイドカードだと安くなったりするのも同じ理由で、まず消費者に前払いをしてもらえる。しかも多めに、というのがポイントだ。通常であればサービス提供と代金の支払いは同時に行われるが、プリペイドはサービス提供よりも先にお金が入ってくる。つまり運転資金に余裕が出る。消費者にお金を貸してもらっているような状態になる。

上場企業ゆえ「売上」重視

吉野家の定期券も、まず300円で買ってもらう、という点が大きい。お客さんからまず300円もらえるのだ。そしてそれを4回に分けてお返しするのだ。もちろん、毎日吉野家で食べる、ヘビーユース層がいたら、吉野家にとっては損失になるが、実際には原材料費は売値よりも当然やすいので、実質的な損失は少ないと考えられる。

それよりも。その定期券を買ったがために、「損をしたくない」と消費者に思わせることで、4回分の来店を促すことができる。仮に4回来てもらって、牛丼並(380円)を食べてもらったら、80円引いても1,200円分の売り上げになる。この売り上げの確保が大きい。

吉野家も上場企業だから、売り上げというものは非常に重視される。もちろん、利益も重視されるのではあるが、まず売り上げがあって、そこにかかるコストを削減して得られるのが利益であることから、まずは売り上げの確保というのが優先事項になる。特に吉野家のような形態の上場会社はこの形になる。

先述のように、消費者は損をしたくないという気持ちで、1日に3回しかない食事のうち1回を吉野家に割り振る。飲食店というのは、人々の1食を奪い合っている。そう考えると、人々の1食というのは有限な資源なのだ。これを奪い合っている。これを、味や品質だけでなく「損をしたくない」という気持ちで強力に惹きつけてしまう牛丼定期券の力は、メタ的な視点での勝利と考えられる。

一番オイシイ「失効」

こうして、消費者の損をしたくない気持ちを利用して売り上げを確保するのも十分に美味しいが、さらに美味しいことがある。それは4回来店できなかった客が損をする分だ。仮に、期間中に2回しか使わなかった客がいたら、140円は丸々、利益になる。3回でも60円の利益だ。もちろん、定期券の紙代は数円、かかっているが、それでも失効した人が多ければ多いほど、吉野家は大儲けだ。

だからこそ、このキャンペーンは毎年行われているのだろう。

4回いくのは意外と大変

そして僕の経験では、1ヶ月の間に4回、吉野家にいくのは結構ハードルが高かった。もちろん先述のように「損をしたくない」気持ちで、そう気持ちでもって達成したのだが、なぜ昼飯にそこまでの執念を燃やさなくてはならなかったのか、今思うとちょっと滑稽だ。

4回行った時点でようやく、80×4=320で、客は20円の得をすることができる。その先、5回目で100円の得になるのだが、実践した者としてはこれはかなりハードルが高かった。サラリーマンはおよそ20日間の出勤があるので昼食のチャンスは20回。当たり前だが週1で行って4回。この週1を達成できてようやくトントンになる。この4回からどれだけ積めるか?の勝負が牛丼定期券のミソなのだが、僕はやれて週2くらいだった。つまり80円×8回=640円から300円を引いた340円が、週2の吉野家、月8回の吉野家メシを達成して得られた報酬だった。もちろん吉野家は美味しいのだが、昼食選択の自由をやんわり制限されているように感じてしまわないだろうか?

影縫い

僕はこういう現象を「影を縫われた」と感じていた。影縫いとは忍者が使う技で、影に手裏剣を投げて動きを封じる技なのだが、この手裏剣が牛丼定期券だと思う。僕らは牛丼定期券を買うことで、週1の吉野家を強制されるような状況になる。もちろん、行かないという自由もあるのだが300円を前払いしているという気持ちは思いの外、強い。これにより動きを縫われた消費者は吉野家に通わざるを得ない状況を作り出される。

吉野家は美味しいのだが、正直連日は飽きる。そして何より「行かなきゃ」という気持ちは意外にも負担になる。そして先述ように、頑張って8回/月を達成したところで340円の得にしかならないのだ。8回というのは、平日が20日あるうちの8回、8/20=40%だ。これを差し出してようやく340円!

僕は今回から定期券を買うことをやめた。僕のペースでは、普通に支払って、月に3回くらい行くのが適正かと思う。それならば定期券は必要ない。

得する人

さんざん批判してしまったが、最後にこの定期券で得をする人について考える。職場の近くに吉野家やはなまるうどんがあり、毎日行っても飽きない人は間違いなく得だ。もし毎日1食、20日を達成できたら、吉野家のみでも1,300円分、はなまるうどんなら1,700円分を浮かせることができる!すごい!

…すごいな?

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