侠気という鎧

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日記

今回は、以前読んだ本で、印象に残った一節を紹介しよう。

浅田次郎先生の『珍妃の井戸』という小説の一節で、登場人物の瑾妃チンフェイの台詞だ。

「人間は獣の一種だから、元来はみな臆病。

自分の命を守ることしか考えない。

ところが長い歴史の間に、優れた人間はその本能を凌駕する精神を身につけた。

それが「侠気きょうき」という鎧ですね。

そういう人間がいないと歴史は作られないから。」

浅田次郎『珍妃の井戸』講談社文庫(191ページ)より引用

この言葉を、僕は何かにつけて、思い出す。

ネットで稼ぐには?

僕は2015年ごろからインターネットでお小遣い稼ぎしたいな、と思い始めた。

その頃僕は20代中盤で、ゆるふわホワイトでの余暇時間をエンジョイして、ただただ消費する日々を送っていた。

サウナに通ったり、パチンコに行ったり、ネットでモンハン4Gをやったりしていた。

しかしそんな時間の消費行動も、いずれ飽きてくる。そのときコンビニで『SPA!』を立ち読みして副業でのお小遣い稼ぎを知った。同時に、いかにゆるふわホワイトと言えど、オッチャン達にイラついちゃう事件がいろいろあったりして「雇われ人の立場ってくだらないなぁ〜…」と思い始めていた頃だった。

そんな風に嫌気が差していながらも、生活費を手に入れるには、現状は雇われ人をするしか他に方法を知らなかった。同時に、このホワイト職場というのは、効率よく稼ぐにはとても良い場所であることも、わかっていた。

1日2〜3時間、労働力を提供するだけで年収500万円くらいが簡単にもらえた。時給としてはとても高く、絶対額はともかくとして、時間効率という意味ではとても良好だった。

なのでその有り余る時間をさらにお小遣い稼ぎに使えないかなぁと思っていたのだった。

さてそんな中でインターネット上でのお金稼ぎを学んでいった。

当時、インターネット上で稼ぐには下記の手法があった。

  • アフィリエイト
  • PV数を稼いでのアドセンス(広告モデル)
  • 情報商材系(サロン含む)
  • ネットせどり(転売)

「ブロガー」と呼ばれる人たちはどうやって稼いでいるのか、最初は良くわかっていなかった。著書の印税とか、セミナー講師とか?と思っていたのだが、どうやらそれは一部の超著名ブロガーしかできない手法のようだ。

そのためインターネットで素人が稼ぐとなると、上記3つのどれかが課金ポイントとなるのであった。

「獣」になる?

実践している人がいたら申し訳ないのだが、これらは先の引用のセリフの通り「獣」になってしまう要素がたくさんある。

まず専業になろうとしたら、生活費として月に数十万円の収益が必要だ。となれば、

  • 高単価のアフィリエイトを多数、制約させていく
  • 何百万PVを稼いでアドセンス広告収入を得る
  • 自分の情報商材を高価な値段で売っていく
  • サロンをやって月額会費を集める

実質的にはこの辺を狙っていかなければ数十万円を稼ぐことは難しいことがわかった。

もちろん、どれも簡単なことではない。なので僕はこれらの方法で専業になるのは現実的でないな、と思い、あきらめたのだった。

そして見ていると、これらの手法で生計を立てている人たちは、高確率で「獣」になっていた。

人々の不安を掻き立てたり、射幸心を煽り立ててアフィリエイトに誘導したり、

思わずクリックしてしまうような心理テクニックを用いた炎上系のタイトル記事で釣り上げてPV稼いだり

明らかに割高な情報商材やサロンにうまく誘導したりする。

いわゆる情報弱者狩りビジネス。

もちろんこれらには、なんら違法性はない。合法だ。

ただ、ひたすらに「獣」だなと、僕は思ったのだった。

自分自身の美学の問題

さんざん悪く書いてしまったが、実践している人たちだって生活費のため、お金を稼ぐための手法としてやっているのだということは理解している。

実際、上記のようなテクニックを使わないと全然稼げない。

雇われ人を辞めてしまっているから、生活費を稼がなくてはいけないのも、わかる。

だからこそ、そういう手段(情弱狩り)を取らざるを得ないこともわかる。

しかしただ…ただ。「獣」だなと。

自然だなと。

野生だなと。

そう思ってしまう。それを美しくないと感じるのは、100%僕の主観だ。「やめなよ」と言うこともできないし、筋合いもない。

ただただ…自分はやれそうにないなぁと、当時は思っていた。

情弱狩りができないなら、インターネット上で生計を立てていくのは、僕には無理そうだと思ったのが、2017年ごろまでだった。

聖帝サウザー流

そんな経緯があってから、僕は革靴を修理して売るとか、レアな付録の雑誌の転売とか、錆びたゴルフクラブの再生とか、やや実物に寄った副業を模索していったのだが、これが難しかった。

とにかく、仕入れをタダ同然にしないと儲けが確保できないのだ。

中古品ということで、どうしても出口である販売価格が安くなりがちだからだ。

そして送料とか、プラットフォームの使用料がかかっちゃって、利益がほぼ残らないこともわかった。

そういうこともあって、実物を用いた副業も、ダメそうだなと思っていた。

雇われ人をやめたくて、そのために副業をいろいろ模索したけれど…

ネットも、実物も、なんかダメそうだ…

そりゃそうだ。そんなに簡単なら、みんなやめてるよな。みんなサラリーマンを続けているってことは、やっぱりサラリーマン辞めるっていうのはとても難しいことなんだなと。

半ば諦めかけていた。

幸いにも、僕はゆるふわホワイト勤務だった。多少、ウザいオッチャンたちはいるけれど、そいつらだってあと10年もすれば半減しそうだし、まぁ、人並みに耐え忍んでやっていくか…と思っていたそんな2018年に、聖帝サウザー師匠がVoicy「サウザーラジオ〜青雲の誓い〜」をオンエアーされた!

その中で「商品を作る」という奥義を授かっていくのであるが、第40話で神回が登場する。

第40話 自分の商品の熱烈なファンは、最初、自分しか居ない!

この回を聞いて、僕の中で結論が出た。「獣」にならずに収入を得る方法の萌芽である。

つまり、自分が好きで好きでたまらないことを突き詰めていって、商品化する。ただしマニアレベルになっている商品を。それを自分が最も楽しむことによって、結果として良い商品が誕生するのだと。同志が喜ぶ商品が作れるのだと。

この方法ならば、先述のように「獣」になってネット上で情弱を狩るようなことをせずとも、収入を得ることができると、わかったのだった。

「稼業」という概念

また、僕の印象に残っている話をしたい。

『龍が如く 見参!』というゲームで、吉岡清十郎というキャラクターが登場する。

彼は稀代の剣士であり、名門の剣道場「吉岡道場」の当主なのにも関わらず、道場で指導をしていなかった。代わりに、大して強くない弟の伝七郎が師範をしていた。

そして吉岡清十郎は金にならない剣術道場ではなく、藍染の仕事を一生懸命やっていた。

彼はそうして、自分の家を維持していた。

彼はそれを「稼業」と言っていた。

剣の道という「本業」に対して、藍染という「稼業」。

本業である剣術道場で稼ぐのではなく、稼業で収入を得つつ、剣術道場も続ける。

このスタイルなら、本業において、獣にならずに済みそうだ。

だからすぐに雇われ人を辞めるのは早計だと思って、稼業として「ゆるふわ化学メーカー勤務」をしつつ、本業としてこのような発信活動を続けている。

今後は、聖帝サウザー師匠のいう「職業道楽コース」を目指すべく、まずは不動産収入を作り出す。そしてそれを一定数集められたら、次のステージに無理なく進めると考えている。

コメント

  1. 松森 祐也 より:

    はじめまして。
    記事を拝見しました。

    情弱狩りの「獣」にならずに収入を得るための方法である「稼業と本業」について非常に興味深いなと思い読ませていただきました。

    このような考え方こそ、別の投稿にもありました英雄王の名言「無意味さの忘却、苦にならぬ徒労、すなわち遊興(娯楽)」ということだと思いました。

    本業が英雄王の言う遊興、娯楽であるからこそ、誰からも無反応でも続けられるし、金目当てにならないから売り手に媚びない自分の見出した真実を形にできるということなのかなと思います。

    それが後々になって商品になることもある、しかし商品になることを期待してはいけないということかなとも思いました。

    • ヤコバシ ヤコバシ より:

      森松さん
      コメントありがとうございます。
      素晴らしい理解です。その通りです。
      もはや情弱と言われる人々のインターネットリテラシーも高まりつつあり、騙されるカモもだいぶ減っていると思います。
      そうなると、正々堂々と商売する他なく、そうしえリテラシーが高まった人、もしくは元々高い人ほど、銭ゲバのムーブには強い拒絶反応を示します。
      逆に、清廉潔白で潔く、真心から来る商品には敬意を払って、多少の金額のものでも買います。
      個人の商売というのは、そういう段階にあると私はみています。
      そこでポイントとなるのが英雄王の名言ですね。
      そこから滲み出てくる欲求からくるパッションで同胞へ向けた商品を作る。真に役立つと確信して世に送り出すからこそ、リテラシーの高い人の心を打ちます。
      なおリテラシーと、可処分所得には相関があると思われます。