EX勤め人ルートに入ったことを確信した昨年秋から3ヶ月で感じたことが多くあった。
それを共有していきたいと思う。
後継者は社長のことだけじゃない
この記事でお話ししたいことは、
「企業は後継者を求めている」
ということだ。
後継者というのは、もちろん社長が筆頭ではある。
しかし社長という「君主」だけではなく、その配下、つまり日々の業務を執行してくれる「有能な将軍たち」が必要だ。
将軍と部隊長の違い
ちなみに将軍と部隊長は違う。
部隊長は、将軍から指示を受けて行動をする実行部隊の兵隊長であり、作戦の立案はしない。最前線で戦闘を行う。
将軍は、作戦を考える立場で、戦略と戦術を担う立場だ。
最前線で戦闘をすることはない。
君主と将軍の仕事の違い
これは三国志に例えるとわかりやすい。
劉備が率いる軍は、最初は特定の領土を持たない流浪の軍勢だった。
軍師に諸葛亮を迎え、龐統らの活躍もあり荊州と蜀州を手に入れる。
さらに五虎大将軍という有能な五人の将軍により漢中という要地もその手に収めて、いわゆる三国鼎立状態を作った。
そして劉備は蜀の皇帝となって最盛期を迎えた。
しかし五虎大将軍が殺されたり病没したりして、劉備も没したときに、蜀には有力な将軍がほとんどいなかった。
諸葛亮の下、姜維や魏延が頑張っていたが、どうしても五虎大将軍には及ばない。
君主の劉禅(劉備の子)もパッとしない。
そのため残った諸葛亮はなんとか頑張ろうとするのだが、五丈原で病没。
そこから蜀は宦官の専横もあり衰退し滅亡していく。
この事例では、君主である劉禅が微妙だったから蜀は滅亡したと言われるが、配下の将軍に良い人材が少なかったというのも理由として大きいと感じる。
君主は、実務はしない。
君主が戦場に出向いて戦うなど、基本はない。
君主は、組織内のルールや仕組みづくり、人材の登用、設備への投資判断、他国との親善などを主たる任務とする。
将軍は、兵隊を率いて敵と戦い、勝利して領土の拡大を目指す。
君主はこの将軍らが任務を進めやすくなるように、人員を補充したり装備を与えたりする。
このように君主と将軍はまた違う種類の任務がある。
これは現代の会社組織においても同じで、社長は君主、取締役は将軍となる。
取締役は、営業、生産、技術開発、調達、事務系にそれぞれ要る。
大きな企業であればビジネスの単位、事業部の単位で本部長が居る。
そして将軍の下に、部長、次長、課長が居て、兵隊である一般社員やアルバイトがいる。
組織が元気よく戦っていくためには君主である社長の方針と姿勢はもちろんだが、有能な将軍による采配が必要だ。
先述の通り、君主には君主で、君主にしかできない任務が多数ある。
例えば銀行との資金調達の話や、社内方針やルールの決定、大規模な投資案件などは社長が判断する必要がある。
将軍の意見を聞くことはあっても、決定の責任は社長が負う。
場合によってはそれらを円滑に進めるための会合に出向く必要もある(パーティーやゴルフ等)。
そのため社長は忙しく、現場での戦闘において陣頭指揮などできない。
つまり実務、現場での戦闘は、将軍に任せるしかないのだ。
有能な将軍を集めたい
将軍は、臨機応変に戦い、戦況を自軍に有利なように進めていく必要がある。
場合によっては被害を軽減するため撤退を決断しなければならない時もある。
この判断は非常に難しいことも多く、全てを満たせる選択はほぼない。
限られたリソースの中で、何かを諦めて、何かを得るという取捨選択を迫られて、その中でベターと思われる選択を繰り返していく。
つまり判断力が求められる。
君主である社長が全てを仕切ることは物理的にできないから、将軍がどれだけ有能かどうかが企業の盛衰を分ける。
私の見るところ、やはり大企業になればなるほど、有能な将軍クラスの人の数が多い。
中小企業はまず社長が素晴らしい人が多いが、将軍クラスの人がわずかしかいない。
そのため、社長が前線に出なければならなくなっている。
私は化学メーカーの営業として、価格交渉なども行うが、大企業相手で社長と直接交渉などはない。
多少こじれても、購買部長・資材部長・調達部長というような将軍クラスまでで決着できる。
つまりこれらの将軍が諸々の情報を集めて精査した上で判断した結果であれば社長は決裁しているということである。
対して中小企業だと、肩書き上では購買部長となっていても結局は社長との直談判まで発展するケースが多く、将軍がいないんだなぁと感じている。
そして君主である社長がそのような末端の戦いの前線に駆り出されて戦わなければならないという点で、大変だなぁと思うのである。
つまり将軍が少ない、もしくはいないのだ。
三国志の劉備軍で言えば、関羽や張飛がいなくて、劉備と諸葛亮でヒイコラ言いながら外敵を追い払うのに終始する、というような状況だ。
ゲーム「三國志」シリーズをやったことがある人ならわかると思うが、序盤の劉備軍で関羽張飛趙雲がいなかったら荊州を守ることで精一杯で、蜀まで攻めになどいけない。
それどころか内政もろくに進まずじわじわと削られていってしまう。
例え話が長くなってしまったが、要するに企業は、社長は、将軍の後継者を欲しているのである。
一族経営は長期的視点あり
日本の企業においては今なお創業一族による同族経営が根強い。
これは、一見すると平等でないとして不公平感を覚えるかもしれない。
以前の私も、どんなに功績をあげても、同族経営である限り社長にはなれないではないか、と思っていた。
しかしながら、この同族経営というものは、いわば生まれついての宿命であり、その立場から逃げられないという非常に厳しい道のりでもある。
もし同族経営の企業の子息に生まれたら、継ぐか、一族から追放の形で独立するかしかない。
血縁から逃げることは難しい。
もし本人に意欲がなかったとしても、生まれもって責務を負う人生だ。
社員50名であっても、その家族の生活もかかっている家業であるとなれば、その重責は想像することも難しい。
そのため創業一族は幼少期から帝王学を子息に授けるし、そして子息もまた、自分が多くの人の人生を背負っていくことになるという自覚と覚悟を持っていく。
この人生はある意味で宿命づけられていて、選択の余地は事実上、あまりない。
ただこれは悪いことではないと思う。
創業一族は、決して逃げられないし、そしてその任期は長く、また次世代にバトンを繋いでいく使命がある。
つまり長期的視点で経営を行う人々であるということだ。
上場企業でサラリーマン社長が数年で入れ替わる会社とは異なる。
サラリーマン社長は自分の任期中のことを重視することが普通だからだ。
もちろん人格者で、自分の任期後のことも考えての経営をするサラリーマン社長もゼロではないと思う。
しかし、創業一族に比べたら、その責務は相対的には軽くなることは致し方ないことだろう。
前置きが長くなったが、つまりは創業一族の人々というのは血縁という逃れられない宿命に置かれていて、事実上、社長という椅子から逃げられない状態にある。
そして家業を次世代に繋いでいくという使命もあり長期的視点で経営を行っている。
「守り」の将軍はおいしくない
その時に、君主である社長が最前線で戦うのは先述の通り、効率がとても悪い。
つまり日々の実務をうまく捌いて既存の商売を問題なく回したり、新規顧客を開拓してくれたりする有能な将軍が必要なのだ。
君主は実務をお任せできる、信頼できる有能な将軍を、ひとりでも多く欲しいと思っている。
EX勤め人とは
私の言うEX勤め人ルートとは、この将軍という地位において、特に「新規開拓」方面担当の将軍を目指すことにある。
注意しておきたいのは、既存の商売を問題なく回すとか、日々のルーティン作業の監督を主とする将軍ではない。
この将軍はいわば「守り」の将軍だ。
ここを目指すとサラリーマンピラミッドを最下層から一段ずつヒイコラ言いながら何十年も登っていくことになってキツい。
いわゆる、昔ながらのサラリーマンの出世ルートである。
これは「部隊長」の終着点としての将軍である。
私はこれはおいしくないと思う。
勤め人の嫌なところが結構入っている。
- 雑魚狩り
- 雑魚狩りに伴うフルタイム労働
- 給与はそこまで伸びない
そうではなく外征、つまり「攻め」の将軍を担うことにより、先述のサラリーマンピラミッドから離れることができて、一気に8号目までジャンプアップできる。
同時に勤め人として嫌なことはだいぶ減る。
飛信隊が好例
わかりやすく例えるならば、この方式はキングダムの主人公、信の出世ルートのことだ。
信は一般歩兵からキャリアをスタートしたが、その中で王騎将軍に見出され、飛信隊という小部隊の隊長に任命される。
これは独立遊軍の形態であり、いわゆる正規軍には組み込まれていない部隊である。
王騎将軍の采配もあり、見事に初陣で敵将を討ち取った信はそこからも独立遊軍として各地の戦場に派遣されて戦功を重ね、隊員も増えて、信は将軍となった。
ここでポイントとなるのは飛信隊が独立遊軍であったということである。
当然、秦軍には正規軍があるし、大将軍も何人か居てそれぞれが大軍を率いていた。
そのピラミッド構造に組み込まれる可能性もあった。
しかしそうではなく、独立遊軍の形態で、将軍まで出世したというのがポイントだ。
作中では、栄備将軍や土門将軍という、モブ将軍も登場するが、彼らはピラミッド構造の中においての将軍であり、いわば守りの将軍である。
正規軍という、兵隊の人数がとても多い組織において、規律を保って一定の成果を出すという意味で大切なポジションではあるが、性質としては守りである。
組織ピラミッドを適正に運用するための、重要パーツという意味での将軍だ。
ここは目指さない。
そうではなく、あくまでもこのピラミッド構造から出たところで独立遊軍をすることがポイントとなる。
独立遊軍になるから、兵隊の将軍にマイクロマネジメントされなくなったり、雑魚狩りを(比較的)やらなくても良くなるのだ。
またその特殊性から、給与も上がりやすく、また何となれば転職時の自分の看板になるような実績を作れる場でもある。
これがEX勤め人ルートの概要だ。
続く
コメント