前回の記事では勤め人がツラい原因について述べた。
そしてそれを回避できれば、勤め人の性質由来のネガティブな面は大きく薄まる。
税金から逃れられない(経費計上できない)等の問題は勤め人であるがゆえに残る。
しかし一方で、独立自営になると降りかかってくる困難や精神的なプレッシャーを回避できるという考え方もできる。
独立自営の自由さと、それに隣り合うリスク。
これらを天秤にかけて、それでもやはり自分には独立自営の方が好ましいと思うならば、そうした方が良い。
自分の「慎重さ」度合い次第
こういったことを考える時に私がいつも思い出すのは、漫画『キングダム』の合従軍編のワンシーンだ。
函谷関を攻める魏軍と韓軍の大将、呉鳳明と成恢が横並びで攻撃していた。
その時、成恢の本陣がやや前方に布陣していた。
対して呉鳳明はやや後方に布陣した。
どちらが明らかにダメということもなく、これは好みの問題だった。
成恢が積極的な性格、呉鳳明が慎重な性格をしていた、程度のことだ。
この後、成恢は呉鳳明よりも攻めやすいと見られ、狙われ命を落とした。
この事例は「慎重さを欠いたからやられた」ということを述べたいのではない。
仕事や商売に対するスタンス、重量配分は個々人の性格や好みによって違うということを言いたかった。
先ほどの例では成恢は命を落としたが、うまくいっていたら先んじて函谷関を攻め落として大手柄を挙げたかもしれない。
成恢の布陣が悪手であったとは一概には言えない。
慎重さとリスク許容のバランス。
これには個々人に濃淡があり、それが個性なのだ。
雇われ人卒業に対するスタンスも同じだ。
リスクをどの程度まで許容していくのか?ということになる。
これは性格や好みはもちろん、家族・子どものことや貯蓄額やローンの状況などにも左右され、総合的な判断を下していくことになるであろう。
「身動き」がどれだけ取れるか
私が思うに、多くの雇われ人は、性格や好みというよりも状況ーーつまり家族とローンで既に身動きが取れなくなっていると見ている。
そのため実質的に、選択肢が雇われ人を続けるほかなくなっている。
これがもし、
- 若い(20代〜30代前半)
- 配偶者や子がいない
- 借金(奨学金)・ローンなし
- 貯蓄(数百万)アリ
という条件であれば、選択肢を広く取れる人は多いはずだ。
上記の条件であれば、ひとまず仕事を辞めて瀬戸内海の方に移住、貯金ある限りニート暮らし、だってできるのである。
しかしながらこれができる時期は限られている。
そしてこの資本主義経済ーー日本社会は、油断をするとすぐに借金(ローン)漬けにしようとしてくる。
これに抗うには知識武装が必要だ。
聖帝サウザー師匠が警笛を鳴らし続けてきた「新築住宅・新車・盛大な結婚式」。
この3つを回避するだけで、人生のロックのかかり具合はだいぶマシになる。
ローン=将来の給与の抵当権
「新築住宅・新車・盛大な結婚式」。
これらは簡単に数百万円が吹き飛ぶ。
そもそも一括で買えない・お金が足りないので、借金つまりローンを組む人が多い。
しかしこれは未来の現金を先食いする、というだけで、支払いから逃れられるものではない。
結局は自分の生涯の財布から金利を載せて、絶対量を多く支払うことになる。
この自分の生涯にて持てるお金の絶対量が、金利で流出してしまうのが厳しい。
自分のお金の流出を防ぐ方法を知っていれば、人生にロックをかけられにくくなる。
結局、ローンを組むということは、未来の給与に抵当権が付くということ。
未来の給与の所有権が無くなってしまう。
繰り返すが、ローンは「先食い」だ。
この先食いをするためのコストが金利、つまりお金のレンタル代金なのだ。
真の価値は?を考える
ここまで、ローンを組むことのリスクを述べてきたが、ではなぜ多くの人はローンを組んでしまうのだろうか。
それは真の価値を推し量るトレーニングをしていないからだ。
トレーニングをしていないから、売り手が放ってくる幻術に抵抗できない。
有名な話だが、新築マンションは鍵を開けた瞬間に3割、安くなる。
新築プレミアムというやつだ。
新車も同じく、登記した瞬間から中古車になって、価格ダウンする。たとえ乗っていなくても。
もちろんこれらは、不動産業者や自動車メーカーの販促費であるが、大切なのはこういった実用性がないコストを回避しようと思う気持ちと試みである。
ボロボロの20年前の中古車に乗れとは言わないが、5年落ちのコンパクトカーならどうか。
築30年のボロ木造アパートに住めとは言わないが、築15年の鉄骨アパートならどうか。
そこまでクオリティを下げずに、お金の流出を防げる。
思うに、中古市場はその実用性を加味して、適切な価値を値段に反映している。
精神的な見栄とか、満足感とかは抜いてあって、ひたすらに実用面での価格付けがなされていると思う(大衆車の場合)。
新築や新車を買いたい気持ちもわかる。
しかし買うのであれば、精神的プレミアムの存在を認めた上で決めよう。
精神的プレミアムを支払うのだという覚悟を持って買うなら、いいと思う。
それは趣味の領域だからだ。
ただ、そのプレミアムの乗ったものを買うのは、余裕が出てきてからにしたいところでもある。やはり趣味だからだ。
このプレミアムに対して信念なく、そしてローンを組んだら厳しくなる。
真のお金持ちの思考回路
知人で代々続く資産家がいるが、この人はお金に対する価値観が徹底されていて感銘を受けた。
決してお金がないわけではない。
しかし「いかに無駄なプレミアムを回避するか」そして「いかに安く手に入れるか」を反射的に考える思考のクセがあった。
言い方を悪くすれば「ケチ」とも捉えられるかもしれない。
しかしこれは単にケチというわけではなくて、ひたすらに投資効率の最適化を図っているということだ。
その姿勢の徹底ぶりは本当に驚く。
いかに少額の支出であっても緩まない。
最小の支出・投資でもって、最大のリターンを目指そうとする。
この姿勢の積み重ねが資産家への道なのだと思い知った。
というか彼らはこういう動作が骨身に染み込んでいて、特に意識せずとも反射的にこう考えて最善の結果を得ている。
結果、ますますお金持ちになっていくのだ。
もしこの価値観がなければ、新築で豪華な家を建てて、新車で高級車を買って、嗜好品を買って…となって、資産はどんどん流出していくだろう。
いわゆる一般人の消費性向である。
資産は築くのも大変だが、防衛するのもまた大変なのだ。
守りの要衝
長くなってきたのでまとめに入る。
こうして身の丈に合った消費をして、資産のディフェンス力を高めることができたら、勤め人をしていても困窮することは少なくなる。
特に化学メーカー勤務であればなおさらだろう。
- 適切な賃貸に住み、中古コンパクトカーに乗る
- 盛大な結婚披露宴をやらない
結果、数百万円の貯金ができる。
これだけでだいぶディフェンシブな布陣を構築できる。
無職になってもしばらくは耐えられる貯蓄があれば、心理的安全の源となる。
「まあ最悪、仕事やめても数年は生きていけるしな」
という状態だ。私も今この状態にある。
この状態になると勤め人をしていても精神的に追い込まれなくなる。
「クビにしたいならすれば?」
くらいの精神性で居られる。
月々の支出がそこまで大きくないからだ。
これがローンがあると、支出が多くなってしまい、一気に資金面での不安が出てきて、精神的に追い詰められる。
やはりローンというものは自分の身の丈を超えた消費であり、そのツケは未来の自分が支払っていく。これがキツい。
聖帝サウザー師匠の仰る通り、私は新築の家と新車と盛大な披露宴は回避した。
それでも趣味のゴルフはやっているし、それなりの身だしなみとしてスーツをオーダーで作ったり、革靴を買ったりしている。
しかし要衝である住居・車・披露宴を抑えたから、余裕がある。
影響の大きいこの3つを制すれば、ディフェンスとしては十分だ。
この状態は「身動きが取れる」状態であると言える。
この身動きが取れる土台から次の作戦行動に移れる。
コメント