台風直後:「店番」の本領発揮

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営業テクニック
僕は化学メーカーの営業職。商品が勝手に売れる仕組みが完成しているため、普段は暇で、このように執筆活動に精を出せる。2019年10月、台風19号という超大型台風が通り過ぎた後の出社日、弊社は電話祭りとなっていた。

営業タイプ

「営業職」とは定義が広い言葉だと思う。ガシガシ新規顧客に売り込みをかけていく「売り子」営業もあれば、来るお客さんの相手をする「店番」営業もある。対等な立場で交渉に赴く「渉外」営業や、既に友好的な関係の取引先との関係を維持する「大使」営業もあるし、未開の地に新たな概念を布教する「宣教師」営業もある(参考記事:営業タイプ5分類
その中で、僕の現職・化学メーカー営業職はメインが「店番」である。

「店番」の日常

「店番」型の営業マンは、基本的に、新規に打って出る役割は要求されていない。それは商品の性質上、既にいる重要顧客に商品を安定供給することが第一の責務となっているからだ。むしろ、新規顧客を増やしてしまうと、安定供給という面で不安要素になってしまう。なので「あんまり売るな」と言われる。
そんな「店番」なので、基本はヒマだ。
お客さんが「売って」と定期的に言ってくるが、これは業務部が対応する。たまに、トラックが足りないから納期ずらしてくれとか、そういうお願いを電話でするくらいだ。また、各種の証明書類とか、見積書をだしてくれという依頼には、メールで送ればOKだ。
営業職というカテゴリーではあるけれど、限りなく業務部に近い性質を持っている。ゴリゴリの新規開拓の売り子営業をやっていた僕からしたら、これは営業といえるのか?と転職してしばらくは思っていた。

店番の本領発揮

そんなヒマな日常だから、営業部の面々は日々ヒマであり、いかに早く飲みに行くかとか、ゴルフの話をしたりしているのだけども、今回のような天災があると急に忙しくなる。
まず自社の工場の状況確認から始まり、顧客の工場は台風の被害に遭っていないか、輸送のトラックの運行状況はどうか、道路は走れるのか―――それを「店番」たちは一生懸命電話して確認している。コレを書いている今まさに、周りの同僚たちは電話しまくっている。僕も一応、各所に電話した。無事だった。よかった。
今回の大型台風においては、僕の勤務先および取引先は、特に大きなダメージがなかった。これは運が良かった。

「いざ鎌倉」要員

今回は運がよく、自社も顧客にも大きなダメージが無かったのですぐに終わった。しかし、もしダメージを負っていたら対応はもっと長くなっていただろう。例えば自社の工場が半壊したとか、修理が必要になったとなれば納期の相談をしなくてはならない。自社でなくともメインの運送会社がダメージを負っても同じだ。
これを、膨大な数の顧客を対応していくとなれば、社長ひとりでは対応しきれない。そんな有事のときの対応要員として、やはり店番は必要なのだ。そういう「いざ鎌倉」のような状況のために、僕らは雇われているのだ。だから、普段がかなりヒマでも許される。
台風、洪水、地震、どこかの工場の爆発事故、それらの「いざ鎌倉」的な状況の時に、僕らはフル稼働する。

存在意義:権限と露払い

先ほど、店番的営業は限りなく業務部に近いと述べた。それなら営業マンなんていらないじゃないか、と。「いざ鎌倉」も、業務部が頑張ればいいじゃないか、と。
しかし「権限」という切り口で考えるならば、確かに「営業部」は必要である。
顧客との窓口であり、渉外的な役割を担う「営業部」でないと発令できない書類や指示がある。契約書や見積書などだ。これらはISOの管理という観点から、業務部からでは発令ができない。同じく、今回のような災害時の対応に関しても大本営としての機関として、やはり「営業部」という分類になるしかないな、とも思う。
あとはやはり―――顧客の数が多すぎる、というのが一番だろう。膨大な数の顧客を、業務部の女の子が全部対応するのは難しい。というか、そういうことをやりたくないから事務職をしている子にそんなことやらせたら、すぐ辞めてしまうだろう。
この対応を社長や幹部がいちいち対応していたら、もっと頑張るべきビジネスの本流に割く時間がなくなってしまう。その露払い要員としても「店番」営業は必要なのだ。
今回のような「いざ鎌倉」は年に1回起きるかどうかレベルであるから、やはり割りの良い高給バイトと呼べるであろう。

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