僕は大学でプロダクトライフサイクル理論を学んだ。学んだとはいっても大したことではない。商品は生まれて、流行って、一般的になって、すたれていく。これを動物の一生に例えている。動物も生まれて成長して、最盛期を迎えたあとは老化していずれ死ぬ。まさにライフサイクル。それの商品版がプロダクトライフサイクル理論だ。
ファーストペンギン
初めて市場に参入する者をファーストペンギンと呼ぶ。ペンギンが生息する冷たい海は危険だ。ペンギンを食べようとする大型動物がいる。しかしエサである魚を捕まえるために、ペンギンはその危険を冒して海に飛び込まなくてはならない。魚がいる保証もないし、飛び込んですぐにシャチの口が待っているかもしれない。このようにリスクがあり、リターンも不明な中で最初に飛び込むペンギンがファーストペンギンだ。先述のような不幸(魚がいない、シャチがいる)に見舞われたら、容赦無く死んでしまうが、運良く生き残れて魚もたくさんいたら、ファーストペンギンは独占的に魚を食べることができる。
このファーストペンギンは、プロダクトライフサイクル理論においては最初の部分に当たる。商品の誕生だ。まだ誰も手を出していない市場だから、顧客は集中する。独占的だから値段も自分でつけられるし、実際売れる。他に類似品がない独占状態だから。
後追いペンギンの参入
ファーストペンギンが死なずに、魚をたくさん食べている事が徐々に広まると、同じようなことをやってみようというペンギンが出てくる。しかしまだその数は少ない。1羽、また1羽とポロポロ海に飛び込んでいく。まだ魚は十分にいるから、食べられる。
これはファーストペンギンの作り出した商品の競合を指す。悪く言えばパクリだが、もちろん各人の個性が現れた商品となる。ファーストペンギンの商品の不便さを解消した改良品もあるだろう。もしファーストペンギンの商品よりも劣る商品であっても価格が安いという切り口もある。
成熟期
こうしてファーストペンギンが切り開いたエサ場(市場)にどんどんペンギンが参入してくる。商品は種類を増やし、内容も充実して、価格競争も始まる。商品を享受する側には良い条件になるが、売る側は激化した競争によりさらなる改良とコストダウンを迫られる。
ちなみにこのフェーズにおいてファーストペンギンは、ファーストつまり先行者であるがゆえの実績や知名度でシェアを押さえられているかがポイントになる。
過当競争と衰退
こうして商品の性能が高まって、行き着くところまで行く。そこからはコストダウン競争が激化する。品質に大きな差がないなら、安い方が売れるのは当然だ。もしくはブランドイメージなど値段勝負にならない土俵で戦うしかない。
この競争により市場価格は下がるところまで下がる。先のペンギンの例で言えば、海にペンギンがすごいたくさんいて、魚が食い尽くされているような状況だ。残った小魚を皆で奪い合っている状況だ。
プロダクトの死
こうしてコストダウンが進みきった商品は儲からないので手を引く人が増える。そして代替品が見つかると一気に死ぬ。カセットテープが好例で、当初は画期的だったカセットテープがCDやMDに置き換えられて消滅した。
ユーチューバー
この一連の動きは、近年にはユーチューバーも同じだったと思う。彼らはもちろん人間だが、自分自身というキャラクターを商品にしていた。最初に始めたファーストペンギンがまず人気になった。しかし参入が増えてくると、競争が激化してクオリティや内容が重視されるようになった。それに対応できてファンを囲い込めたのが今のトップユーチューバー達なのであるが、今この時期においてはユーチューブという場は成熟期を迎えている。ユーチューバーはさらに面白い動画を、毎日という頻度で更新し続けなければ他のユーチューバーに遅れを取ってしまうようになった。これはテレビ的な属性を持つユーチューバーの特徴だが、これもプロダクトライフサイクルが確実にある。
寿命が長い商品
誕生と隆盛、最盛期を経て衰退しいつかは死ぬ。全ての商品はこの運命から逃れられない。一見、寿命がないように見える商品は、寿命がとんでもなく長いだけだ。そして、目指すべきはこのとんでもなく長い寿命を持つ商品を自分のものとする事だ。
このような商品の特徴は物体を伴っていることである。実物体を伴わない商品というのは価値の上下が激しい。ゆえに粗利が高くもなるのだが、それもいつまでも続かないことが多い。ユーチューバーなどは最たる例だと思う。
高粗利の商品が当たって、稼げたら、そのお金を寿命が長い商品につぎ込んでいくと良いと思う。実物というのはそれ自体が価値を持つ。有用性があり、価値を保てる。
無形の資産は水モノだ。それを寿命が長い有形の資産に変えるのが良いと僕は考える。
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