「隙あらば自分語り」に気をつけよう

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ライフハック

「隙あらば自分語り」僕はこの言葉を2ちゃんねるのどこかのスレッドで目にしてから、営業活動において大切にしている言葉だ。

現代人は聞いて聞いて星人

現代人は聞いて聞いて星人で溢れている。あなたの身の回りの人達の会話に注意を向けると、ほとんどの人が「私は昨日、こんなことがあってね…」「僕はこう思うんだけど…」という話をしている。当たり前といえば当たり前なのだが、皆、自分のことを話したいのだ。僕もそうだ。人は、基本的に自分のことにまず関心がいく。次に、自分に近しい人に関心がいく。それは正常な心の働きだが、このことを自覚しているのといないのとでは、大きく違う。

営業の場でも同じだ。基本的にお客さんも自分や自社のことを話したがるし、僕らも自分のことや自社のことを話題にしがちだ。それは、無難な話題でもあるが、やはり自分のことを話したいという欲求は、人間が持つ基本的な欲求なのだと知っておこう。

傾聴スキル

さてそんな聞いて聞いて星人が溢れている中で、「あなたのことを聞かせて」という人が稀にいる。この人は、生まれ持って人のことに関心を持てる天才か、もしくは人の生態(聞いて聞いて星人)を後天的に勉強し実践できている人だ。僕は後者にあたる。

このように人の話に耳を傾けることを「傾聴(けいちょう)」という。名著『人を動かす』においても傾聴はとても大事なスキルとされる。先述のように、人が自分のことを話したいのは本能的なものなので、放っておくと自分語りをしてしまい、相手の傾聴ができなくなってしまう。

僕が見た実例を紹介しよう。電車で女子高生2人が話しているが、よく聞いてみると会話が成立していない。お互いに「私こんなことがあったんだけど」を言い合っているだけで、相手の話を聞いていない、正確には、物理的には聞こえているのだが、それについて掘り下げたり、続きを促すといった「展開」をさせていない。遊戯王的に「俺のターン!」「俺のターン!」と言い合っているのだ。この場合、どちらにも傾聴スキルがないので、本能のぶつかり合うままにターン制でとりあえず発言するみたいな状況になる。これは会話とは言わない。

お説教も、クレームも

日常会話だけでなく、上司からのお説教や、顧客からのクレームも、聞いて聞いて星人の場合が多い。上司のお説教もよく聞けば「俺が迷惑した、俺が嫌な気持ちになった、俺が責任を負うんだぞ」という内容ではないだろうか。だからそれに反論してはダメだ。反論があっても、それは実は効果がない。上司はいかに自分が困っているかを話したいだけなのだから。あなたが聞きいれる姿勢を示し、相槌を打ちながら、反省していそうな態度をとって聞いていれば、上司は言いたいことを全部言えてスッキリする。そうすれば解放だ。

稀に、本当に意見を求められる時もあるだろうが、そういう時は答えればよい。ただ大抵は「俺の話を聞け」ということしかない。

クレーマーも同じだ。いかに自分が嫌な思いをしたか、大変だったかを話したいだけなのだ。実際に損害が出ていたのなら、弁償するか代わりのものを提供すれば済む話であり、それが絡まないとなるとやはり「私の話を聞いてよ」しか、根底にはないのだ。

かつての僕もそうだったが、そういう人種を理解できない人もいる。僕もそうだったのでわかる。「で?結論は?僕にどうしてほしいの?」と逆に聞いちゃっていた。でも実際には先述の通り、「私の話を聞いてよ」しかないのだから、具体的にしてほしいことなどない。聞いてほしいだけだから。「どうしてほしいの?」と言われたら相手はもう「そういうことを言ってるんじゃない!そもそもそういう態度が〜」と感情的に怒るしか手段がない。

正解としては「それは大変申し訳ありませんでした…」にとどめ、聞く姿勢を示せばそれで良い。僕はそれをマスターしてからこの手の説教やクレームをうまく対処できている。いわば傾聴ルーティン。十分に言いたいことを吐き出したら、満足して終了する。実にくだらないが、そういう人も多いということを知っておこう。他人とは、コントロールできない野生動物なのだから、仕方がないのである。

ただし気をつけてほしいのは、具体的な行動・対応を要請されている時は傾聴ではなく、実際に対処する必要がある。こういう人が相手の時は、傾聴は万能の手段とはならないから注意だ。最も、こういう人はめんどくさくないから心配はいらない。

タモさんは理想形

営業活動においては、営業マンは自分が話さなくては、という強迫観念に駆られてしまう。特に新人の頃は沈黙が怖い。相手が寡黙なタイプだと、つまらない思いをさせてしまっているかと思い、さらに焦って必死に話題を探してしまう。かつての僕もそうだったから、わかる。

営業マンが目指すべきは、明石家さんまさんではなくタモリさんだ。タモリさんは「髪切った?」が有名だが、まず相手に話させるきっかけを作っている。ゲストはタモさんに聞かれると「わかります?実は昨日〜」と嬉しそうに話す。このように基本的に人は聞いて聞いて星人だから、自分のことは、いつだって話したい。聞かれたい。もちろん、このタモさんの「髪切った?」には観察スキルも要求される。質問をするには観察が必要だ。

ただし、営業活動においては初対面で深いところに踏み込むのはいけない。徐々に探り探り、深層部にたどり着くテクニックが必要だが、まず表面を撫でるような質問ならば相手も答えやすい。

  • 今の部署は何年目ですか
  • 通勤は車ですか、電車ですか
  • 御社のホームページにこんな記事があったのですが…

こうして水を向けてやれば、相手は喜んで話してくれるはずだ。そこで出てきた情報に対し、さらに質問を重ねて掘り進めていけばいい。タモさんのように。

相手だって隙あらば自分語りがしたいのだ。ならば、あえて隙を作り話させてあげよう。人は、自分のことを聞いてくれた、知ってくれた相手には安心感を感じる。営業活動において、この心理的効果を使わない手はない。どんどん自分語りさせてあげよう。

これは異性との交際も同じだ。とにかく相手に喋らせる。相手があなたのことを聞きたくなるまで。相手があなたのことを質問し始めたらそれは、相手が話したいことをあらかた話し終わってあなたを気に入った合図だ。

and you? を心がける

会話のきっかけとして、話を振ってくるタイプもいる。「キミは、車何乗ってるの?」などだ。こういう場合は、本当にあなたの車に興味がある場合もわずかにはあるが、大抵は自分の車の話をしたい。相手からその話題を出してくるということは「その話題を俺に振ってくれ!」というサインだ。これを見逃して「僕はアクアに乗ってますよ。中古で買ったんですが実は〜〜」なんて始まったらその人はモヤモヤすること請け合いだ。話題泥棒である。

正解は「僕はアクアに乗ってますが、XXさんは何に乗ってるんですか?」だ。相手は「よしきた!」と喜んで話し始めるだろう。このように「〜〜and you?(あなたはどう?」を常に心がければ、相手に話させるきっかけを増やすことができる。やはり現代人は聞いて聞いて星人なのだ。

だから…隙あらば自分語りにならないよう、気をつけよう。僕は面談の前に必ず、隙あらば自分語りに気をつけよ、と念じて打ち合わせに入る。それほどに、自分語りというのは強い力を持つ、人間の本能としての欲求なのだ。

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